3.渋味の認識機構の解明
ポリフェノール特有の味である渋味は消化管に発現する侵害受容器(TRPチャネル)に認識されることを見出しました。
渋味はポリフェノールの中でも、ベリー類に含まれる色素であるアントシアニン、カテキンの重合物であるプロシアニジン、タンニン類に見られる味です。
植物においてポリフェノールは弱酸性(pH4.0-5.0)の液胞に含まれています。一方、私たちがこれらのポリフェノールを摂取すると、口腔・小腸・大腸において中性pHに晒されます。渋味を呈するポリフェノールは中性では、活性酸素の一つであるスーパーオキシド(O2-)を産生して、分解し別の化合物へと変化します。
TRPチャネル(Transient receptor potential)は6回膜貫通型非選択型陽イオンチャネルで、主に感覚神経終末に発現しています。温度・痛み・pH・化学物質といった様々な刺激に対して活性化し、脳にその刺激を伝達します。TRPチャネルは活性酸素を認識することもわかっています。
例えば、カプサイシンはTRPV1を活性化し、辛味を脳に伝え、更には交感神経活動を活性化することで私たちは発汗します。
私たちはTRPチャネルの阻害剤を用いて、渋味ポリフェノールが消化管環境下において活性酸素を産生し、その活性酸素が消化管感覚神経上に発現するTRPチャネルを活性化することを見出しました
【現在の研究テーマ】
渋味ポリフェノールが活性酸素を介してTRPチャネルを活性化することが推測されましたが、そのメカニズムを明確にするために、ノックアウトマウスを用いた解析や、活性酸素を産生しないアナログを用いた研究を進めています。